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五話
宗寿丸の様子を見つつ、両手で雪をすくい上げた。その冷たさに驚き、思わず手を離してしまいそうになったが、どうにか庭石の上へと置くことができた。
楕円にするところまでは良かったが、鼻先をふんわりと摘まむのは技術を要した。
葉をつけたところで宗寿丸をちらりと見ると、慣れた手つきで鼻先をちょいちょいと摘まんでいる。
「器用だな」
集中しているところに話しかけるつもりはなかったのだが、うっかり口にしてしまった。
手を止めた宗寿丸が、こちらを向いた。
「邪魔をするつもりではなかったのだが……すまぬ」
「兄上にほめられるのは、うれしいです」
まことに嬉しそうに笑うので。
いつものように頭を撫でようとして、雪で濡れていることを思い出した。
頭に触れる寸前で手を止め、いかがするのがよいかと考えていると、大きく綺麗な手が宗寿丸の頭をそっと撫でてくださった。
「私が、鬼武者の手の代わりになろう」
「朝長異母兄上……ありがとうございます」
宗寿丸の隣に屈まれた次兄の朝長異母兄上に、お礼を申し上げた。
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