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告白前夜
明日、 鉄優人は、幼馴染みの楓春花に告白する。今はその告白前夜だ。
にしてもだ……今日のはとんだ失策だ。
寝室のベッドで布団を首まで被ると木目の天井を見つめながら今日の事を考えた。
高校三年に上がったら、春花の誕生日である4月10日に告白をしようと前々から決めていた。
でも人生初の告白。ノミの心臓を持つ僕は告白という大舞台を成功させる自信が全く持てなかった。
そこで、この緊張を何とか出来ないものかと考えた末に思い付いたのが、告白する前日に予告をすれば当日緊張をしないで済むのではないのかと考え付いたのだが──。
「お、おれ、あ、あした、春花に……こ、こく、告白するから」
昇降口にいた生徒が一斉にこちらを見ている。ガラス張りの玄関を透して射す夕日のせいで逆光になり春花の表情が読み取れない。
彼女は今どんな表情をしている?
いつものようにパッと花開くように白く整った歯を見せにこやかに笑っている?
はたまた、ハムスターのように頬を膨らませ真っ赤な顔をして怒っている?
少し垂れた眉を更に曲げて困り顔をしてる?
昇降口からすきま風が入り彼女の黒く艶やかな髪は、まるで金色の絹のように輝き緩やかになびく。
その姿に見とれていた僕は先生の「用がない奴は早く帰れよ」という声で我に返ると、急に恥ずかしくなり上靴のまま玄関を飛び出してしまった──。
今思い出すだけでもトクトクと心臓が騒ぎだし落ちつかなくなる。告白をする宣言は全く効果が無かった。
時計を見れば時刻は既に11時をまわっていた。
はぁー。と溜め息をもらす。
明日の事を考えれば考えるほど眠れなくなる。
これは明日のシュミレーションをしておかなきゃ安心して寝れなさそうだ。
そう思い僕は眼を瞑る。
眼を瞑れば直ぐに春花の表情を思い出せた。
そうだ。僕は必ず成功させる。
そして妄想の世界にトリップしていく。
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