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圭祐side
目の前で僕の答えを待っている君。本当のことを言ってしまえば楽になれる? だけど、僕の気持ちを知ってしまったら……? きっと今までのようにはいられなくなる。
ずっと、ずっと、君のことが好きだった。どうしようもないくらいに大好きだった。君のことを考えて自身に触れながら、僕は何度も達した。
ある日、自分の部屋で下半身に触れていると、勢いよくドアが開いた。
「けーすけ!」
「んあっ……あっ……翔兄……」
ちょうど握った手の中に欲を吐き出した瞬間だった……
恥ずかしさと気怠さから逃げることも隠れることもできなくて……僕は自身を握りしめたまま僕を見つめている翔兄を見る。
「あーあ……こんなにしちゃって……」
「あっ、ダメ……」
「ダメって言ったって、まだこんなに……」
「いいの……僕……」
「泣くくらい好きな奴がいるの?」
翔兄の問いかけに、僕は自分が涙を流していることに初めて気づく。
「ほらっ、手をのけて……」
言われるままそっと手を離されると、僕よりも大きくて温かい手に包み込まれる。
「んっ……」
自分で握るよりもずっと気持ち良くて、思わず声が出そうになるのをぐっと呑み込んだ。
ゆっくりと擦りあげられて、僕はすぐに二度目の欲を吐き出した。
「ふふっ、圭佑……可愛い」
「だって……」
「もしかして、誰かに触れたの初めて?」
その質問に静かに頷くと、また可愛いって言って、頭をくしゃくしゃっとされた。
これが僕と翔兄の初めての行為……
「でっ、お前が泣くほど好きな奴って?」
僕の気持ちがようやく落ち着いた頃、翔兄が覗き込むように聞いてくる。
僕は、何も言えずに黙ったまま。
「もしかして……相手は男……?」
「だとしたら……僕っておかしい?」
「そんなことあるわけないじゃん……。好きな相手が男だからっておかしくなんかない」
「けど……」
「じゃあ、そいつのこと好きな自分を恥ずかしいって思う?」
「わからない……。でも、周りの人には言えない……家族にだって……」
「うん……わかるよ。その気持ち。俺もそうだったから……」
「翔兄も……?」
「俺もずっと苦しかったから……。好きな奴が一番近くにいた親友だったんだ」
「僕も……なんだ。いつも側にいる親友……僕も……朔矢が好き……」
「そっか……。でも、いつまでもこのままじゃいられないのはわかるだろ?」
静かに問いかけてくる翔兄に、僕はただ頷いた。
それからも、自分の気持ちを隠して笑う日々。君はきっと気づかない……。だけど失うくらいなら、このままでいいと思っていた。それなのに……。
あの日、大学の仲間と開いた飲み会の席で、僕は思い知らされた。
僕たちは特定の女の子と話すこともなく、いつものように隣に座りながら時間をやり過ごしていた。
そこに、君のことを気に入った女子が僕とは反対側にピッタリとくっついて、すごく近い距離で話している。
見慣れている光景……のはずだった。何もおかしいわけじゃない……。ただ、僕の気持ちが溢れてしまっただけ……。
イヤだ……
そんな風に笑いかけないで……
もう、愛想笑いもできない自分がいた。気がつくと、携帯を取り出して僕は翔兄にメールを送っていた。
"助けて…"
たったその一言だけのメッセージ。すぐに来てくれた翔兄は、店から僕を連れ出すと、近くの路地裏に入り込む。
「どうしたの?」
「いいから……ちょっとここで待機」
「うん……」
訳のわからないまま、息がかかるくらいの距離で静かに時間が過ぎる。
そして、突然触れてくる感触……
思わず声が漏れる……
誰かがいるような気がしたけれど、今の僕には忘れたいことがある。
外での行為に抵抗してるように見せながらも、逃げることはしなかったのに、すぐ翔兄の手が止まる……
「翔兄……?」
「今日はここまでね。ほらっ、送ってってやるから」
優しく笑うと、頭をポンッと撫でて翔兄が僕から離れていく。
路地裏を出たところで振り返ると、『おいで』と腕を伸ばしてくるから、僕はそんな翔兄に駆け寄った。
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