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 大きな手のひらの温もりに支えられながら、もう一度、聡を見る。  不義なこと。  将来そんな夫婦にならない為に、私は今夜ここにやってきた。 「……私なんて、入籍前夜に昔好きだった人に会いに来たんだよ? よっぽど不埒で不純だよ」 「香代子、何言って」 「それにずっと思ってたんだよね。聡のほうが私より可愛いもの好きだし、似合うなって」  大きく深呼吸して、ゆっくりパスされたボールを受け入れるように、今度は私が手を差し出す。 「私は、可愛い聡が大好きだよ。だから結婚してからも……ハムちゃんでいていいんだよ?」  聡にとっては、白いワンピースを着る最後の夜のつもりなんだろう。告白を受け入れられた安堵でへなへなと崩れた聡と同じよつに、ハムちゃんは泣き顔で聞き返す。 「香代子……本当に、本当に俺でいいの?」  「……聡にね。人として好きだって言われて、嬉しかったんだ、私。……それに、二十代のうちに結婚したいのに必死なのを分かって、聡はプロポーズしてくれたんだよね?」 「それは……うん」 「だから、それだけで充分」  頬を染めながら泣き崩れる聡は、やっぱり可愛かった。
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