34人が本棚に入れています
本棚に追加
大きな手のひらの温もりに支えられながら、もう一度、聡を見る。
不義なこと。
将来そんな夫婦にならない為に、私は今夜ここにやってきた。
「……私なんて、入籍前夜に昔好きだった人に会いに来たんだよ? よっぽど不埒で不純だよ」
「香代子、何言って」
「それにずっと思ってたんだよね。聡のほうが私より可愛いもの好きだし、似合うなって」
大きく深呼吸して、ゆっくりパスされたボールを受け入れるように、今度は私が手を差し出す。
「私は、可愛い聡が大好きだよ。だから結婚してからも……ハムちゃんでいていいんだよ?」
聡にとっては、白いワンピースを着る最後の夜のつもりなんだろう。告白を受け入れられた安堵でへなへなと崩れた聡と同じよつに、ハムちゃんは泣き顔で聞き返す。
「香代子……本当に、本当に俺でいいの?」
「……聡にね。人として好きだって言われて、嬉しかったんだ、私。……それに、二十代のうちに結婚したいのに必死なのを分かって、聡はプロポーズしてくれたんだよね?」
「それは……うん」
「だから、それだけで充分」
頬を染めながら泣き崩れる聡は、やっぱり可愛かった。
最初のコメントを投稿しよう!