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「……やっぱ伝説のハム先輩は別格だわ……」  真っ白な頭をビール瓶で殴られたみたいな衝撃度だった。  身長170センチ未満の華奢な体に、丸みのある顎と目鼻は、レースたっぷりの白いワンピースが死ぬほど似合っていた。  と言うか、寿莉くんとかぶってるじゃないか、聡! 「元が違うわぁ。ナチュラルメイクであれなんて羨ましい!」 「ワンピかぶるのはいいんだ」  カーテン布を巻き付け、私は遠目で、寿莉さんは熱視線で、聡ことハムちゃんを眺め続ける。 「むしろ後輩の私がかぶってすみません!て、全裸で土下座したいぐらい」 「うん、それはちょっと勘弁して。初恋相手の全裸と彼氏のロリィタ姿を同時に見る勇気は……」 「それもそうね。二人の男? に挟まれて、香代子ちゃん絶体絶命ね」 「挟まれての意味が違う気が」  無駄口を叩きながら、久しぶりの洋装に水を得た魚のごとく生き生きとする聡を遠くから黙って見つめる。 (……私との結婚、無理してないのかな)  寿くんが寿莉さんになった三年前に、聡は引退したらしい。ちょうど私と付き合い始めた頃だ。  付き合うにあたり、聡はけじめをつけたのだろうか。  女の私よりきれいな肌をした聡に、一度だけ「メイクしてあげるよ、絶対に可愛いから」と酔った勢いで襲いかかったことがある。はにかみつつも断固と拒否する聡が何とも愛らしくて、すべすべの頬に私からキスをした。  ワンピースとお揃いの白いヘッドドレスを付けた聡は、ボックス席で元仲間たちと苺のお酒を飲みながらポーズを決め、何枚も写真を撮っている。楽しそうな横顔は、結婚情報誌の付録『二人の入籍を特別に♡ウエディングカレンダー』のハート模様を愛でる表情と同じだ。 「――聡!」  振り返り、腹式呼吸で全力で叫んだ。 「か、香代子ちゃんっ?!」  入店してから私が何を話しても全て受け止めていた寿莉さんが、おろおろと困惑し出す。同時に「何なに」と店内のが騒ぎ始めた。 「……か、香代子? ……ど、どうしてここに」
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