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新しく始まる戦隊ヒーロー番組「カゲロウ戦隊」の記者会見。主演に選ばれたキャスト陣がしゃべり終わり、最後に原作担当兼監督が質疑応答に応じる。若い監督に記者団は興味津々だ。
「監督、何故カゲロウ戦隊は四人なのですか? 普通は五人ですが。まさか、シークレットで後から一人増えるのでしょうか」
「いいえ、四人です。最後の一人は、番組を見てくれている皆さんなのです」
「なるほど、ヒーローは皆というコンセプトなのですね、素敵です」
カゲロウ戦隊が流行ると、彼らは自分達の偽物が日本全国にいると知ることになる。四人しかいない中途半端なヒーローと、自らを五人目のヒーローと言ってはばからない子供たち。子供たちはちゃんとした五人目なのだ、どちらが強いかなんて言うまでもない。
あの日、倒されそこなった彰はまだ倒されていない「悪の組織」だ。だったら徹底的に戦うまでだ、ヒーローたちと。暗い笑みを浮かべて、彰は記者会見に応じ続ける。
――見てくれよ、悪の組織はこんなに立派になったよ。これからどんどん増える、カゲロウ戦隊を名乗る「悪」がたくさん、たくさん、たくさん。
――子供の「悪」なんて、いなかったもんね? 悪いやつに騙されてるんだって思うよね。カゲロウはどうだか知らないけど、他の三人は躊躇っちゃうよ、みんな優しいから。そんなバラバラな意見でチームワーク保てるかなあ。
――さて、カゲロウ戦隊のみんな。君達はいつまで、ヒーローごっこを続けられるかな? そのうち倒されちゃうかもね。
――手加減は、しないよ。シツレーだもんね? 本気で行くよ、だって僕らは友達なんだから。
”悪の組織のボス”となった彰は、笑顔で記者会見をしめくくった。
「イベント開催も決まっています。僕の生まれ育ったところで行うショーが第一話となっています。ご期待ください。チケットはありませんので、お子さんと一緒に是非見に来てくださいね」
多すぎる「敵」に、カゲロウ戦隊は、いつか。
敵一人に対して戦隊一組で戦うのがセオリーなのに、たった四人で数十、数百の「敵」を倒さなければいけないカゲロウ戦隊は、いつか。
いつか。カゲロウたちは。
END
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