カゲロウ消える時

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「……! あ、彰君! 大丈夫!?」  泣きそうな顔で叫ぶのは直哉の母だ。 「すごい音がして、駆けつけてみたら君が倒れてるから! 救急車呼んだから、今お家にも連絡したからね! 痛いところはある!?」  心配そうに言う彼女の顔を見て、大粒の涙があふれた。 「やっぱり痛いの!? 大丈夫だからね」 「ちが、違うんだ……おばさん。俺、みんなに会って」  その言葉に直哉の母は息をのんだ。 「みんな、カゲロウ戦隊になってて。大人になってた俺は偽物で悪の組織の手先だって。それでもいいんだ、それがみんなの“生きる”意味になるのなら、倒されたかったんだ。でも、倒されなかった」  しゃくりあげながら、二十一にもなって大泣きしながら言う彰に、直哉の母は涙を浮かべて頭を撫でる。 「何で……? 直哉たちが、助けてくれたの?」 「違う。一人、足りないから。戦隊ヒーローは、五人いないと足りないから。俺が、足りない。俺だけ、大人になったから」  彼らは、ヒーローとして生きることもできない。夕暮れの中を中途半端な存在として彷徨い続ける。救う事ができない、何もできない。 「そう、そうだったのね。ごめんね、彰君には、いろんなもの背負わせて」  泣き続ける息子の友人の頭を、救急車が来るまで撫で続けた。自分達には何もできない。どうしようもない。遠くから近づく救急車の音が、彰の嗚咽をかき消した。
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