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少女の目が僕の方に向けられる。目が合ってしまった。
なんと声をかけるべきか……。ああもう、言葉が思いつかない。
「ペンナ? どこにいるの?」
フロースは僕なんかどうでもいい様子で地面をまさぐり始めた。
そんな、無視されるような間柄だったのか? いいや、違うな。
「もしかして、目が見えないんですか?」
「ヒャッ! なんだ、あんたか」
あんた呼ばわり……。
「あの……。僕はイグニスです。知ってるかもしれないけど、一応」
「知ってるに決まってるでしょ? 何年の付き合いだと思ってるのよ」
キュンとあの鳴き声が聞こえた。羽の生えたウサギがフロースの手に、口にくわえた丸い物を押しつけた。手鏡のようだ。
「拾ってきてくれたの? ありがとう」
フロースは鏡を僕に向けた。ギラリと外の光を反射し、視界に鉛色の影を焼きつけた。
「凄いものね。七種全部の妖霊がちゃんといる」
「七種の妖霊? 普通、人間一人には妖霊一羽って決まってるんじゃあないんですか?」
「敬語気持ち悪いからやめて。あと、質問厳禁。ついでに自分のことは俺って呼ぶこと。さて、出発しましょっか。って!」
フロースは外に鏡を向けるなり顔を険しくした。
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