Ⅰ.ソルのない世界

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 茶色くくすんだ空。その下を枯花に似た鳥が渡っていく。  風は湿気と砂を含み、吹きつける度に温い感触を残していった。  なんて気分が悪いんだろう。  夢の残像から浮上しきらない思考の中、僕は呻いた。  麻酔のような眠気が覚めてくると、全身が焼けるように痛み始めた。  声を出しただけでも骨が悲鳴を上げ、僕は指先一つロクに動かせないでいた。  一体、眠りに就く前に何があったんだろう? 考えてみて気づいた。  何も思い出せない。  ここがどこなのか、今が何月何日なのか、さっぱり見当がつかない。  ドロリとした恐怖が胸に一気に広がっていく。  誰か近くにいないのか? 助けてくれ! 「目が覚めたか?」  いつの間にか、全身が銀色に透けた青年が隣に座っていた。  一見普通の青年に見えるが、背中には大きな銀色の翼が広がっていた。 「誰?」 「俺は祈りの天使、アルスだよ。今日から一時的にお前の体に宿らせてもらうことになったんだ。宜しくな」 「祈りの天使? 宿るって?」 「わりいわりい、これを飲ませてやれって頼まれてたの忘れてた。口を開けて」  アルスは手に持っていた小瓶の中身を僕の口に流し込んだ。  味がしない。ただの水?
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