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茶色くくすんだ空。その下を枯花に似た鳥が渡っていく。
風は湿気と砂を含み、吹きつける度に温い感触を残していった。
なんて気分が悪いんだろう。
夢の残像から浮上しきらない思考の中、僕は呻いた。
麻酔のような眠気が覚めてくると、全身が焼けるように痛み始めた。
声を出しただけでも骨が悲鳴を上げ、僕は指先一つロクに動かせないでいた。
一体、眠りに就く前に何があったんだろう? 考えてみて気づいた。
何も思い出せない。
ここがどこなのか、今が何月何日なのか、さっぱり見当がつかない。
ドロリとした恐怖が胸に一気に広がっていく。
誰か近くにいないのか? 助けてくれ!
「目が覚めたか?」
いつの間にか、全身が銀色に透けた青年が隣に座っていた。
一見普通の青年に見えるが、背中には大きな銀色の翼が広がっていた。
「誰?」
「俺は祈りの天使、アルスだよ。今日から一時的にお前の体に宿らせてもらうことになったんだ。宜しくな」
「祈りの天使? 宿るって?」
「わりいわりい、これを飲ませてやれって頼まれてたの忘れてた。口を開けて」
アルスは手に持っていた小瓶の中身を僕の口に流し込んだ。
味がしない。ただの水?
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