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起き上がってみて自分の姿に仰天した。
衣類を一切纏わず、体中にドロドロとした液体でまがまがしい文字が書かれていた。それだけならまだいい。
問題は体の至るところが動物の体の一部に変形していたことだ。
指の間には魚のヒレのように膜が張り、胸には蛇のような鱗がびっしりと貼りついている。足は完全に鳥の足そのものになっていて、原形を留めていなかった。
半ばパニックになる。
まずは落ち着こう。そうだ、落ち着くんだ。
ひとまず何かを着ようと僕は近くに丸めてあったシーツのような物を体に巻きつけた。
コトリ。
シーツを取り上げた拍子に何かが転がった。空の小瓶だ。
なんでこんなところに小瓶なんか。なんとなく拾っておいた。
どこかから、少女の悲痛な叫び声が聞こえた。
鳥足でつまずきながら走ると、赤茶色の岩肌の上に声の主と思われる栗色の髪の少女が地面に伏して頭を抱えているのが見えた。
彼女の前で翼竜のような羽を持ち、顔と尻尾がワニのように尖ったずんぐりの獣が地面を打ち鳴らしている。
妖気の淀みから生まれた霞の獣、妖獣だ。
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