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なんだよ、この外人。知らない人に気軽に話しかけて来るなよ!
そう思った直後、よく考えればここはアメリカだということを思い出した。
外国人は自分の方じゃないかと、脳内で自分にツッコミを入れる。
しかし、どうしてアメリカ人というやつは見知らぬ相手にすぐ話しかけてくるんだ。こっちは見た目アジア人で英語が話せないかもしれないというのに、彼らはそういう気遣いがまったくない。もっと考えてほしい。
優作は内心、ぶつくさ言いながら、先ほどの外人のセリフを思い返していた。
あれ? 先ほど聞こえたのは日本語ではなかったか?
いや、もしかして実は自分はいつの間にか英語が得意になっていて、脳内で勝手に変換されていたのではないだろうか、だとすれば「やった!」と、優作は思った。
聞き流し英会話を毎日聞いていた甲斐があった。
「彼らの味覚は一体どうなっているんでしょうね。おそらく味は関係ないんでしょう。彼らに必要なのは珍しさと量のみ。そう思いませんか?」
「え? え? あ、あの」
優作は慌てて唾を飲み込んだ。しかし、さっきのパサパサした寿司のせいで喉が詰まってうまく飲み込めなかった。
「に、日本語を話しておられます?」
「あれ、違いましたか? 私が人間と会話をするときはその人物の国の言葉で話すようにしているのですが、あなたは日本人ではないのですか?」
「い、イエス! アイ」
優作は軽いパニックに陥った。否定疑問文で尋ねられたら、答えは反対になるんだったっけ。
「ノー。アイムジャパニーズ」
「え? だから日本人で合ってますよね?」
天パ外人が眉根を寄せる。
「あぇ……」
そういえばさっきから相手は日本語で話していたじゃないか。優作は恥ずかしさで顔が火照った。外国人の顔を見て話すとどうしても英語が出てしまう。英語が話せる訳でもないのに顔が外人ってだけでなぜか英語で話そうと頑張ってしまうのは日本人特有の悪い癖なのだろう。相手が必ず英語圏であるとも限らないのに英語を使う。
英語は共通語と教えられているせいもあるのだが……。
「すいません。欧米人を見ると、なんか全部英語に聞こえてしまうんです」
「そうですか。私はまた、人間界に長くいるせいで設定が狂ってしまったのかと思いました。はははは」
「……に、人間界?」
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