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過去
「綾だって、もしもこうくんの立場ならそうしたよ?」
大きな瞳でこちらを見上げる綾は雨に濡れても美しかった。
綾は幼少期から重い病で病院漬けの日々だった。何も悪いことしてないのに綾はずっと病院にまるで罰を受けさせられているようだった。重い病気のせいで苦しそうにしていた時も珍しくなかった。医者には「15歳が限界だろう」と厳しい言葉を言われたけど、綾は20歳になろうとしていた。
頑張った。本当に頑張ったよ、綾は。
「綾…僕は…」
「ううん、いいんだよ…こうくん。これで」
もっと幸せにしてやりたかった。
笑って欲しかった。
もしも綾が元気になったら沢山出かけようって約束していた。
もしもと約束を共に使うなんておかしな話かもしれない。
だけど僕達には、そのもしもに約束を賭けるくらいもう他に望みはなかったんだ。
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