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数時間前
「綾はこうくんを誑かした悪女なんです」
「そんなことない…!!僕は綾が好きで今もこうして…!」
「じゃあどうして、私の願いを聞いてくれたこうくんはそんなに辛そうなの?」
「それは…」
遡ること2時間ほど前。
簡単に言うと僕らは病院を抜け出した。
栄養が送られる細い針を自分で抜いて、点滴も抜き捨てながら綾は今と同じように「こうくん」と口火を切った。
部屋に入るや否やそんなことをする綾の光景に驚いて止めようとしたけれど、綾の真剣な瞳に金縛りのように動けなくなった。
「私と…逃げて」
短い決意の言葉だった。
当然初めは否定したけど、綾の悲壮感漂う言葉に同情してしまった。
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