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「こんな生かされ方で、生きたくないよ」
彼女は震えながら打ち明けてくれた。
初めて彼女の笑顔以外を見た僕は堪らなくなって抱きしめた。
何故なんだ神様。何故綾なんだ。何もしていないのに。
そう思って気がついたら「行こう」と口にしていた。
もしもあの時綾をちゃんと止めていたら。
そう思っても何もかもが遅すぎた。
今頃僕達を病院の人達は大騒動の中探しているんだろうな。
最期に自然の中で死んでいきたいと日頃から望んでいた彼女は勿論、僕も綾の最期を覚悟した。
だから二人で確認するまでもなく今僕達は山の中にいる。
元々田舎町の病院だったこともあって、山に囲まれた病院から程遠くなかった。
山の天気は変わりやすい。どれくらい歩いたかなんて分からなかった。
2人とも衣服を汚して先に綾が力尽きた。当然だ。
その死を受け入れるように動かない綾に、僕は綾の頭を自分の膝の上に誘導した。
固くて高い枕しかない僕を許してくれ。
もしも僕が女だったら最期の時までもう少しマシな膝枕の一つや二つしてあげられたのに。
そんなこんなでそのまま動けないままに今に至る。
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