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改札を見ていると、メガネをかけた背の高い人が小走りに出て来るのが見えた。
先輩だ!
わたしは嬉しくなって手を振る。気が付いた先輩は、また小走りで駆け寄ってきてくれた。
目の前に立った先輩はスマホを操作する。すぐにわたしの持っているスマホが短く震えた。
『お待たせしました』
『それほど待っていません』
『でも鼻が赤いですよ?』
そう言われ、わたしはマフラーを鼻まで上げた。見上げた先の先輩は、クスクスと笑っている。
あぁ、一体どんな声で笑っているんだろう。先輩の声が聞きたい。
胸がキュッと締め付けられるのを悟られないように、わたしは先輩の手を取って歩き出した。
冷たい季節の中、お互いを温め合うように身を寄せて恋人たちが歩く静かな町で、わたしたちも手を繋いでデートを楽しむことにした。
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