03~冷たい雨

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03~冷たい雨

 小鬼どもは、親玉である鬼が死んだのを見て我先にと町から一目散に森の方へと逃げ帰って行った。 セラは町の火を消す為、お得意の水を扱う護符を取り出しそれを町の人々にも張りつけてくるようにお願いした。 「お嬢こちらは、張り終わりましたよ」 キョウが言ったのでセラは、護符に気をため込んで一気に町の火を次々と消して言った。 人々はそれを見て皆セラ達に感謝した。 鳳仙は、セラが自分の言った事を聞かずに町へ来たことをまだ怒っているのか顔もあわせてくれない。 ――「鳳仙……」 セラも、どうしたら良いのか悩んでるようで二人には微妙な空気が漂っていた。 「鳳仙、許してやれよ。セラは、俺達が心配だったのさ」 ユウゲンは、鳳仙の肩に腕を置いて言った。 セラは、まだすべての鎮火が終わっておらず人々に言われてキョウとあちこち行ったり来たり忙しそうにしている。 鳳仙は、セラの方を見て少し寂しそうな表情をした後、ユウゲンの方へと向きなおっると 「ユウゲン、俺はこのままここを去る。セラの事を頼む」 っと、言ったのである。 「はぁ? おまえ……それは、どう言うことだ!」 ユウゲンは、鳳仙の胸ぐらを掴み怒鳴った! 「すまない……」 鳳仙は、ユウゲンの腕を優しくはらうと一歩さがりそのままスゥーっと、霧のように姿を消した。 ユウゲンは、一人そこに呆然と立ちつくした。  セラとユウゲンがようやっと、町の火をすべて消してユウゲンの元へ戻って来た。 「ユウゲン、鳳仙は?」 セラは、辺りに鳳仙の姿が見えないので不信を覚えて訊いた。 「あいつは、ここを去った……」 ユウゲンは、セラの両手首を握ってやるとそうしっかりと口にした。 「どういう事?」 セラは、ユウゲンに訊いた。 「さぁ。ただ一言このままここを去る。セラの事を頼む。とだけ……」 ユウゲンにも何故いきなりこの場から鳳仙が去ったのかよくわからないらしくどうしてやって良いのかわからなかった。 キョウは、 「とりあえず、この場はいったん我々も家に帰ろう」 っと、優しく二人の肩を叩き言った。  家までの道を、とぼとぼと歩くセラ。 風が静かになびき田んぼの稲がさわさわと音を鳴らしている。空には、少し黒い雲が見え、月が雲により見え隠れしたりしている。 『わたし……そんなに鳳仙にとって悪いことをしてしまったのだろうか……』 セラの胸にじわりとあついものが、込み上げてきた。 瞳がだんだんと潤んできて、とうとうすすり泣きまではじめてしまった。 少し後ろで歩くユウゲンとキョウは、セラの震える肩を見るもどうやって慰めてやって良いのかわからないでいる。 そのうち、雨がポツリ、またポツリと降ってきて二人はまだ泣いているセラの手を引き走って帰ったのであった。
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