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月明かりがさしこむ夜。
月明かりだけでは、ちょっと暗いのでろうそくに火をとぼしユウゲンが
「像置いたら、それぽく見えないことは無いが……とりあえず信者集めだよな」
っと言った。
「信者ならいるわよ、こないだ助けたじいさんが」
セラは、仕切り布をピラっとめくりこちらに顔を向けながら言った。
「一人ではダメだろう。それにセラには、やらなきゃ行けない目的もある」
っと、真剣に言った。
「目的なに? 俺も聴きたいな」
鳳仙は、にっこり笑う。
「鳳仙が私に、正体を教えてくれるなら良いわよ」
「良し、わかった」
鳳仙は、素直に聞き入れた。
セラもキョウもユウゲンも、そんなに簡単に教えるんか~い!っと思った。
鳳仙は、息を吸い込むと静かに話しはじめた。
「俺ってば天界のある神の息子なの。んでもってセラにも言ったけど兄貴は家を継いでるし。嫁さん貰えって言われて嫌になって家出した」
「……それを信じろと?」
ユウゲンが言った。
「信じるも信じないも君達に任せるよ。俺はとりあえず正直に言ったよ」
「ちなみに神様ってなんの?」
セラは、訊いた。
鳳仙は、
「一つ教えたでしょ。今度はセラの目的を話す番だよ」
っと応えた。みなまで言うつもりはないらしい。
「私の目的は……」
セラが言おうとしたのだが
「お嬢!」
っと、いったんキョウに止められた。
「キョウ……」
「お嬢、本当に話すおつもりですか? あきらかに奴は怪しい奴なのに!?」
「怪しくて悪かったな……」
鳳仙は、ムスッとしてそっぽを向いてしまった。
「キョウ、ユウゲン。言いこともわかるけど鳳仙は私に悪さは働かないと思う」
「セラ……」
セラは、鳳仙の方へ歩みよると肩に手をポンと乗せるとかかんで鳳仙の目線まで自分もしゃがんみ微笑んだ。
「鳳仙、私天界の天女なの」
っと、打ち上げた。
『知ってるよ、昔からね……』
鳳仙はセラを見つめかえし黙って話しを訊いた。
「私の目的は、この下界を少しずつ天国へと変えること。一人でも多く亡くなった魂を天国へと正しく導くために」
「そりゃあ、途方もない目的だね」
鳳仙は、セラのサラサラの髪を綺麗な指先ですいてやりながら難しい顔をした。
『まったくオヤジのバカがむちゃくちゃ言ったせいだぞ。』
鳳仙は、心の中で叫びたくなった。
「天界の神々もむちゃくちゃ言ったものだよな。セラ一人で出来ない事がわかってて……」
ユウゲンが、奥歯を噛みしめて言った。
「まぁ、言っていても何も事態は変わらないのだし。今日はいっぱい荷物運んで疲れたから寝ましょ」
セラは、言った。
四人は、それぞれ買ってきた薄手の布団に横になった。
「……」
「男三人で並んで寝るなんて気持ち悪いことこの上無いな……」
キョウが顔を青くして真ん中で言った。
「それだけは、同感だ」
鳳仙もユウゲンも頷いた。
「仕方ないじゃない。こんな狭い家にまさか二人も増えるなんて思わなかったし」
セラは、そう言ってロウソクの火を吹き消したのであった。
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