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あれから、昼休みは、屋上に行くと必ず錦野先輩がいた。
それも必ず一人なのだ。彼女みたいな性格なら友達は大量にいるんじゃないだろうか。そんなことを聞く勇気もなく、そのときは、本人の自由だしということで済ませていた。
「あたしね、来世はセミになりたい!」
「は?」
セミが、競うように鳴いて、うるさい真夏の日。
弁当を食べながら話していると突然そんなことを言い出した。
急に何を言い出すんだ、この人は。暑さに脳をやられたか、それともセミの声に感化されたのか。いずれにせよ、まともでは無いのは確かだ。
「そーですか。頑張ってください。」
「あー!バカにしてる!結構真剣なんだからね。」
適当にあしらおうと思ったら、余計にめんどくさいことになった。
こちらの思いに構わず、先輩は続けた。
「ほら、セミって一週間しか生きられないでしょ?それならあたしも精一杯生涯を真っ当できると思うの。」
その言葉に、箸で摘んだ卵焼きから目線を移し、隣で立ち上がっていた先輩を見上げた。こちらを見つめて口角を上げる。
先輩がこんな事を言い出すのは、珍しかった。
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