第四王女の婚姻事情

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 慈愛の母として名高い王妃は、同盟の証として嫁いできた他国の姫君で、プライドの高い女性であった。  第一子として姫を産んだのちに、少し身体を壊したことを慮った臣下が側妃を用意したときも、余裕を持って迎え入れた。側妃が産んだのが女だったことに安堵し、次こそはと願った自身の子はまたも女で。  思えばこのときに、王妃の心は歪んだのかもしれない。  国王は、踊り子を寝所に招くかたわら、側妃のところへも通っていて。さほど間をおかずに双方が懐妊・出産し、王妃は人知れず荒れた。  待望の王子には手が出せない。  だから彼女は、踊り子の娘を狙うことにした。  踊り子に金を渡して城を追い出した王妃は、王に願い出て赤子の世話を買って出たのだ。側妃は王子にかかりきりということもあり、許可は下った。  目をかけていたにもかかわらず姿を消した踊り子に憤っていた国王は、王妃の寛大な心に深く感銘を受け、彼女を見直すに至った。すべて、彼女の言うことを信じるようになった。  後宮は女の世界だ。王妃派のエリアで、異国の踊り子を母に持つマリエンテが見下されるのは当然だろう。  マリエンテがまともな精神で育ったのは、ひとえに乳母であるマーサのおかげだ。  彼女の息子であるマーカスは、幼いころより正義感の強い少年だった。  早くに父を亡くした彼はしっかり者でもあり、「マリーは大事な妹だから」と、乳母を必要としない年齢になってからも、ちからになってくれている。  自室として与えられた離れの小屋は王宮の裏にあったため、マリエンテはこっそり抜け出すようになった。王宮を辞したマーサたちとひそかに親交を続けていたし、いずれは放逐されるであろうマリエンテが自活できるように、生活全般も仕込んでくれた。  そんな折、傭兵として活動していたマーカスが怪我をして仕事を辞めざるを得なくなった。片足に障害が残り、戦場には立てなくなったのだ。  彼が開いた店で働くことを推奨したのもマーサだった。偽名として、名前も借りている。  マリエンテが働き始めてすぐ、マーサは王都を離れた。同じ名前がいたらややこしいと言っていたが、これも彼女の気遣いだろう。  マーカスのもとに届く手紙によると、元気に暮らしているようで、寂しいけれど安心している。
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