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(フェリオさまが、義理とはいえ息子になるのよね……)
かなり複雑な心境。なにしろ彼は、マリエンテの初恋の君である。
後宮にいる男性は護衛騎士か、年嵩の大臣。マリエンテが接する使用人とて裏方が主であるため、こちらも若い男性はいなかった。王宮の外へ出るようになったところで萎縮していたし、どう振る舞っていいのかすらわからなかった。
そんな中で出会ったのが、マーカスの学友であるフェリオだったのだ。
地方に住む貴族令息は、王都の寄宿学校へ通うことが多い。フェリオは騎士科に所属していて、マーカスとはそこで知り合ったらしい。
母親を亡くしたばかりの少年に、母性を刺激されたらしいマーサがよく面倒を見ていて、マリエンテも一緒にいることが多かった。初めて得た異性の友人だ。
王都周辺はブロンドの髪をした者が一般的で、マーサたちもそうだった。
ところがフェリオは灰褐色の髪に濃い青の瞳をした人物で、ひどく驚いた。彼の住む地ではそれが一般的だといい、マリエンテもそちらに来れば、奇異な目で見られることもないだろうと請け負ってくれたことがとても嬉しかった。
「ならわたし、大きくなったらイェルクの住民になるわ」
「では、いつでもお迎えできるように、立派な為政者を目指します」
「ほんとう? わたしが行ってもめいわくにならない?」
「マリーさまこそ、王宮を離れてもいいのですか?」
「きっとわたし、ほうちくされるもの。みんなそう言ってるし、マーサも『ひとりで生活できるようになりましょう』っていろいろ教えてくれるのよ。王宮のシェフともいっしょにお料理をするのよ、すごいでしょう」
「では、いつか手料理を振る舞ってくださいね」
「マリーの手料理を最初に食べるのは俺の役目だよな?」
「ちがうわ。マーサよ」
「……母さんなら仕方ない」
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