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天使のようなあどけない可愛さと、それでいて成熟した肢体の二十歳の姫君。
第三王女は評判の美姫だが、部屋の中ではガラリと態度が変わる。高笑いをしながら醜悪な笑みを浮かべる姿は、いつもながら見事だなあと、逆に感心する。
二十歳が適齢期といわれる王都において、国王が選り好みしていることもあり、デリツィアの縁談は進んでいない。残っている若手貴族は、自身が姿を偽って相手をしていた遊び人ばかりだと気づいているのだろうか。
いや、きっと気づいていないのだろう。こんな殿方なら結婚を受けてあげても構わないわと、上から目線で語っているなかに、そういえばフェリオの名前もあった気がする。
(うーん、だから父親のほうが相手で面白かったのかしら)
これでもしもデリツィアが嫁いできたら、義理の母子になってしまう。それは嫌だし、きっとあちらも嫌だろう。
げんなりしていると、フェリオに声をかけられた。
机に突っ伏しているマーカスと違って、まだ意識がしっかりしているようだが、やはり酔っているのだろう。まっすぐにマリエンテを見つめる視線が熱を帯びていて、胸が高鳴る。
相手は義理の息子(予定)
背徳的だ。
「ダメダメ、義理とはいえ親子になるのですものね」
「なに言っているんだ、君の夫は俺だよ」
「そっちこそ、なにを言ってるの?」
「王命は『マリエンテ・レギアスを、バッヘム伯爵の妻とする』だろう?」
「ええ、だから」
「明日付けで、バッヘム伯爵は代替わりする。この店に来るまえに届けを出してきた。朝一で交付されるはずだ。婚姻の儀は昼からだろう? なら、伯爵は俺だよ」
にやりと、イタズラが成功したように笑う顔に、マリエンテは釘づけられる。そんな反則技は聞いていない。
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