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「物を失くす時ってさ、失くした瞬間は覚えてないんだよな、当たり前だけど」
「覚えてたら、それは失くさないからな」
「時々、思うんだ。物と会話できたらいいのにって」
「はい?」
「そしたら、居場所も聞けるだろ? ほら、部屋のリモコンとか充電器とか、ああいうのもすぐどっか行っちまうじゃん」
「お前が、どっかやっちまうんだろ」
「……」
どうしても親友には勝てない彼である。
それでも。
呼びかけて返事が来れば、どれだけ気が楽かと考えてしまうのだ。
近くにいるのかいないのか、それがわかるだけでも違う。
そして、物を失くしやすい人間というのは、大抵お目当ての近くにいるものだ。そこにあるのに、見つけられない。これ、定番。
だから、問いたくなる。意味のないこととわかっていても。
青年は、トホホと肩を落とした。
「俺のスマホ……どこにいるんですか?」
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