青空ガール

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 ***  絵里名のことは、小学一年生から知っていた。それもそのはず、すぐ近くに住んでいて通学班が一緒だったからである。  いつも、おだんごみたいな特徴的な髪型にしていた。彼女の母も同じで、本人も母親とお揃いをとても気に入っていたということらしい。彼女の友達も、よくお団子頭かわいいね、どうやるの、と彼女を褒めていたのを覚えている。あれがどういう仕組みなのか、自分にもよくわかっていない。多分髪を頭の上の方で結んだあとで持ち上げて、花飾りっぽいのがついたネットの中に押し込む――とかわりとそんな単純なやり方だったと思うのだけど。  で、俺はといえば、そこは小学生男子なわけで。 『絵里名の髪型ってきもーい!ウンチ頭にのっけてるみてー!』 『なんですってえええ!?』  まあ、こんなかんじ。  要するに、彼女の髪型をからかうのがテンプレートだったのである。自分の気に入っている、ママとお揃いの髪型を馬鹿にされていい気分になる子なんかいない。気の弱い女の子なら、ショックで泣きだしてしまうこともあるだろう。が、生憎と言えばいいのか、絵里名はそんな少女ではなかった。口も悪ければ、手も足も出るのが早い。そんな悪口を言った日には、すぐにキレた絵里名に俺がボコボコにされるのが当たり前だった。  小学生の頃ならば、女子の方が体格がいいなんてのものあり得る話である。ましてや、俺は平均よりちょっと小さめの体格で、彼女は背が高い方だったから尚更に。口ばっかり達者で、当時は運動神経も平均的だった俺が勝てたはずもない。毎回パンチとキックをしこたま食らい、結局泣かされるのは俺の方だった。  それなのに、しつこく悪口を繰り返した理由など決まっている。彼女のことが好きだったからだ。  本当は、おだんご頭はとってもよく似合っていた。ちょっとぽっちゃりしていて、ほっぺが御餅みたいにふわふわそうで、肌がとっても綺麗だなと思って見ていたのだ。あと、目がとてもキラキラしていた。一般的な美少女とは少し違うのかもしれないけれど、当時の俺にとっては誰よりも可愛く見えたのは間違いない。
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