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青空ガール
『今どこにいんの』
そんなメールを打ったのは、本当に気まぐれに近いものだった。あるいは、何かの罪滅ぼしのつもりでもいたのだろうか。
五月。高校一年の、昼休み。俺はスマホをいじっていて、充電の消費が早くなってきたことにイラついていた。なんせ小学生の時から使っている古い機種である。使えば使うほど電池消費が早くなるのは当たり前だし、当時から俺はメールやらネットやらでやたらとスマホを使う人間だった(キッズケータイ的なものではなく、普通のスマホを親が買い与えてくれたのもあるのだが)。
機種変しなければ駄目だろうか。というか、その場合親はどれくらいお金を出してくれるのだろう。高い機種は自分のバイト代で払えとか言われるんだろうか。そんなことをごちゃごちゃ考えて、アドレス帳を整理していた。
そうしたら、そこで見つけてしまったのである。
古い古い登録名。――笹田絵里名の名前が。
――俺、消してなかったんだ。
もう絶対、連絡が取れるはずもない相手。それなのに自分は、彼女の名前を残したままにしていたらしい。消すのを忘れていた?否――消せなかったのだ。己が、臆病であったがゆえに。
――……馬鹿じゃねえの。
馬鹿。
当然その罵倒は、己自身に向けられている。
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