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雪鏡と出会ってから、数年が経った。
願い事は湯水のように沸き上がり、枯れることを知らない。
仕事も順調で、恋人との関係も順調。
そして、わたしは、夢を見た。
久しぶりの夢だった。
夢の中で、わたしは1億円を手にした。
数日後、現実のわたしも一億円を手にした。
掌に乗せきれない札束に、仕事をするのも馬鹿らしく、わたしは仕事は辞めた。
欲しかった高級腕時計を買い、オーダーメイドスーツに身を包む。
恋人と海外旅行に行き、欲しいと言われるままにブランド品を買い漁った。
1億円はすぐになくなった。
わたしはまた追加で一億円を願った。
雪鏡は、わたしの願いをすぐに叶えてくれた。
わたしの生活は潤っていた。
人並み以上の生活をして、誰もがわたしを羨んだ。
ある時、追加の願いをした夜、夢を見た。
絶望という闇をさ迷う夢だった。
慌てて起きると、雪鏡の丸いフォルムはシワシワになり、甘い匂いはなくなり、なんだか腐敗した臭いもしていた。
すでに雪鏡に願いながら生活をして、数年が経っている。
ここで枯れてしまったら、わたしはどうやって生活をしていけばいいのか。
なんとか雪鏡を生き返らせようと触った。
チクリとトゲに刺された。
まるでわたしを拒絶しているようで、指先の赤が絶望的だった。
そのあとは、ドミノ倒しにあったように、人生を転落した。
雪鏡に願えば、金を稼ぐことがないため、貯金もない。
買ったブランド品は、二束三文にしかならず、その日をしのぐだけで精一杯だった。
恋人にはフラれ、わたしは暗闇にひとりになった。
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