エピローグ〜これは決してゴールなんかじゃない〜

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「え、と……」 どう言えばいいのか分からなくて戸惑う舞を、友季が後ろからぎゅっと優しく抱き締める。 「おかえり、舞」 仕方がなさそうに溜息をつきながらヒントをくれた友季に、 「……ただいま、トモくん」 舞は首だけで後ろを振り返りながら、照れくさそうにはにかんだ。 「うん。よく出来ました」 友季は満足そうに頷くと、舞の体を一旦離して自分の方を向かせる。 そのまま玄関の壁に舞を押し付けて、両手は指を絡めてきゅっと優しく握るように手を繋いだ。 友季の右手の薬指と小指の付け根の間に、舞の左手薬指に()められた指輪の硬い感触が当たる。 舞が友季のところに嫁いでくるのだという約束をした証の指輪。 結婚をゴールだと考える人も多いと言うけれど、 「やっと舞との生活が始まるのか」 友季と舞にとってはきっと、幸せな日々のスタート地点だ。 「これから毎晩、最低3回は抱いていいんだよな?」 舞を壁に縫い付けたまま意地悪げに笑う友季に、 「えっ? 2回って言ってたじゃん!」 約束と違う、と舞は即座に反論したが、 「へぇ……2回ならいいんだ?」 「……!」 そもそも、前にその話をした時も『最低2回』は友季が勝手に言い出しただけで、舞は許可していなかったことに今更ながらに気が付いた。 完全に、ハメられた。
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