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――ランドセルの天使。
何だそれ? と困惑しながら、隣で姪っ子を膝に乗せている友季の顔をちらりと見る。
「……っ」
友季は恥ずかしそうに顔を両手で覆っていて、舞の視線には気付いているはずなのに、こちらを全く見ようともしない。
「……トモくん?」
舞が恐る恐る声をかけると、
「あの……ちょっと、何の話をしてるのか……」
友季は顔を隠したまま、もごもごと答えた。
「えーっ? 高2の時に言ってたじゃん! 学校帰りにランドセル背負った天使を助けたって!」
初華が、舞を指していた指先を、今度は友季の方へと向ける。
「高2にもなって何言ってんだコイツって思ったから、覚えてるよ!」
「……っ」
友季は膝の上の愛華をソファーの上にそっと下ろすと、
「……ちょっと、トイレ行ってくる」
逃げるという方法を選んだ。
「あっ! 待ちなさいよ、この卑怯者!」
初華は叫んだが、友季は本当にそそくさとトイレへと逃げ込んでしまった。
恋人の姉と姪っ子と共に取り残され、しかも何だか恥ずかしい話題まで振られてしまい、
「……」
舞も気まずそうに黙り込んだ。
「まさか、友季の彼女があのランドセルの天使だったとはねぇ」
初華はまだニヤニヤと笑っている。
……非常に気まずい。
「当時の友季を知ってても、付き合うの嫌じゃないんだ?」
そんな質問には、
「当時の友季さんが、私の初恋の相手でしたから」
舞は堂々と答えられるだけの自信がある。
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