525人が本棚に入れています
本棚に追加
「……“バンソーコーのお兄ちゃん”よりは綺麗な響きだと思うよ」
何か他にいい呼び方はなかったのか、と今更ながらに思うから。
「確かに、すげーダサい響きだよな」
友季も思わず苦笑してから、
「なぁ、舞……」
友季にしては珍しい甘えた声で舞を呼んだ。
「今日はもう帰らないでくれ」
「えっ……?」
「舞と離れたくない」
友季にますます強く抱き締められて、舞は言葉を失う。
「ダメか?」
捨てられた子犬のような不安そうな目で見つめてくる友季に、ぎゅっと胸が苦しくなった。
ダメなわけなんて、あるはずがない。
「ううん。私も、トモくんのこと独り占めしたいもん」
友季の唇を奪い、彼の膝の上から動こうとしなかった愛華に対して、嫉妬してしまっていたのは事実だから。
「なんで急にそんな可愛いこと言うかな……」
友季は溜息をつきながら、舞の左肩にそっと顎を載せる。
「……襲うの我慢出来なくなりそう」
「……!?」
それは無意識に零れた本音だったようで、発言をした友季本人は、そのことに全く気付いていなかった。
最初のコメントを投稿しよう!