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友季の下で働き出したばかりの頃は、この意地悪そうな笑顔が憎らしくて大嫌いだったのに。
今では何故か、心臓が壊れてしまいそうなくらいにドキドキする。
これが俗に言う“恋人フィルター”の恐ろしさというものなのか。
「舞……」
今では、舞を呼ぶこの甘い声も、顔に添えられている手の優しい温もりも、
「……ん」
少し乱暴なのに、甘く痺れるようなキスをくれる友季の唇の感触や、深く絡んでくる柔らかい熱も、全てが愛おしいと思える。
舞のパジャマの裾から、友季がそっと手を入れた。
友季の手が下着のカップの中に侵入し、舞の素肌を優しくなぞる。
「……んっ……!」
舞の体がぴくっと震え、
「ごめん、舞……止まんない、かも」
舞から唇を離した友季が、苦しそうな吐息を漏らした。
またすぐに深く絡め取られるような濃厚なキスと、
「……ん、む……」
胸を優しく包み込む友季の熱い体温に、舞の頭の中は真っ白になる。
「舞……」
甘い時間が流れているはずなのに、友季の声はとても切なくて苦しそうで。
「……俺の意志ではもうどうにも出来ないから……舞の方から、俺から離れて」
「えっ?」
友季の言っていることが理解出来ず、舞は慌てて顔を上げた。
「殴ってもいいから、俺から逃げて。でないと、俺……このまま舞のこと……」
苦しそうな表情でそう告げた友季の手は、今もまだ舞の胸元で忙しなく動いていて。
酷く葛藤していることだけは、よく伝わってきた。
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