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仕事についていくことに必死で、どんどんできるようになっていく仕事が楽しくて、いつの間にか自分の将来しか見えていなかった。
それがどれだけ彼を苦しめたか。
どれだけ彼を失っていったか…。
「その涙が本物なら、きっぱり俺のことふってよ。」
お互い、自分の将来を見るべきだ。
そう言って笑う彼は最後の最後まで優しかった。
あの頃と何も変わらないのに、もう私のものではない笑顔。
でも最後のこの瞬間だけは、確かに私のものだった。
だから私も嘘をついた。
「…もう、あなたのこと好きじゃないわ。私が愛してるのは、今向こうでしている仕事なの。」
それがいつか本当になればいいなと思いながら。
END
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