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「なんなら、男とヤッちまえば?」
ニヤニヤしながら言ってきたので、からかってるんだろうとすぐに解った。
だから俺も同じように唇を吊り上げて言ってやった。
「俺は全然構わねーんですけど?」
「……マジかよ。俺ある意味お前尊敬するわ。」
「翼さんだって男に告られてたじゃないですか。」
「断ってるに決まってんだろーが。んなこと考えたこともねーな。」
「試しにヤッてみたらどーです?悪くはないっすよ。」
「あん?心に決めた人がいるって前に言ったろ。俺はもう遊ばねーよ。」
「いやいやいや、それこそなんのギャグですか、あの翼さんが。」
翼さんだって俺と同じくらい女遊びが激しい人だった。
しかも俺よりたちが悪く、平気で何股もかけるような人だ。
昔、何股まで行くかなとか言って最高8股くらいしてた覚えがある。
俺は付き合うのとかめんどくさいと思ってたし、わざわざそんなんしなくてもヤレるんだから、割り切って遊んでる俺の方がマシだと思う。
「ま、お前にもいつか分かるだろーよ。この人だけと一緒にいたいって気持ちがな。」
「そうっすか……。」
そう言いつつも俺はまだ半分疑っていた。
それは俺が本気で人を好きになったことがないから実感が湧かないのかもしれない。
そりゃあ、いいなーって思う女はいたけど、それは一緒にいて気が楽だったりセックスの相性がよかったりで、一人の人に特別な感情を感じたことはなかった。
俺にもいつか、ねぇ……。
グイッとグラスを傾けて残りを飲み干す。
手の中で氷がカラカラと音を立てた。
「ひなた、行くぞ。」
どうやらバイトの奴が来たみたいで翼さんの後を追って店を出た。
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