手で淫らと書いて手淫と読む

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 店の裏に止めていたバイクの後ろに乗せてもらい、溜まり場に向かう。  目の前にある背中を見て片手でそっとなぞるように触れた。  翼さんの背中には刺青がある。ちょうど肩甲骨のとこに白い翼が生えてるみたいでちょっとカッコいい。  店から溜まり場はそう遠くなく、すぐに着いた。  ANGELは小さな公園を溜まり場にしていた。  公園っつっても遊具はなく、ベンチが3つしか置いていない広場みたいなとこだ。  周りに住宅がなく、夜中騒いでも警察呼ばれることもねーしガラの悪い奴らが溜まってるとこにわざわざ来る奴もいない。  たまにこの場所を奪おうと同じくガラの悪い集団が来ることもあるが、その度に返り討ちにしてるほどANGELは強いチームだ。  ベンチの上には屋根がついていてなかなか快適な場所で、俺は転校する前は毎日のようにここに来て仲間と騒いでいた。  翼さんは公園の隅にバイクを止めると下りてヘルメットを外す。 「なつかしーなぁ。」  翼さんはチームを引退してからバーのオーナーになったから、ここに来るのはそれ以来ってことになるんだよな。  俺もバイクから下りてヘルメットを外し公園に目を向ける。  いつもより早い時間だったけどそこにはすでに何人か集まっていた。  みんな酒飲んでたり煙草吸ってたりと、いつもと変わらない光景に自然と笑みが零れる。  そこに向かって歩こうとしたら後ろからいきなり腰を掴まれた。 「うわっ、何ですか!?」  驚きながら顔だけ振り向くと同時に、翼さんが俺の上着をめくり上げてきた。 「これ見んのも久しぶりだな。」  翼さんは俺の背中を見ながらそう言ってきた。 「……別にっ、見なくていーっすよ!」 「お前だってさっき俺の背中触ってただろ?」  少し乱暴に上着を戻したら、くつくつと笑われて少し恥ずかしくなった。
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