手で淫らと書いて手淫と読む

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「ANGELがなんでつえーか分かるか?」  近くから翼さんの声がしたけど、すぐには顔を上げられず返事も出来ずに黙ってる俺に構わず続けられる。 「絆だ。仲間を想い、信頼し、助け合う。その絆の強さが、チームの強さなんだよ。」 「…………やっぱ、翼さんは、すげーっす……。」  誤魔化すように乱暴に目元を拭い、勢いを付けて立ち上がる。 「何言ってんだ。一番チームのこと思ってんのはひなただろ?じゃなきゃお前に総長任せてねーっつの。」 「……え?」 「地元戻ってから真っ先に俺んとこ来ただろ。女紹介するっつったときも、お前はチームを優先した。違うか?」 「なっ……。」  確かに、月一しか外出出来ないと知ったとき真っ先に浮かんだのはANGELのことだった。  7時にはここ出なきゃいけないっていっても、女とヤろーと思えば出来ないわけじゃない。  でも、俺はこっちを優先した。 「それによ、月一しか来れねえから抜けるなんて、チームを想ってなかったらそんなこと言わねーだろ。あんま来れなくなるからって言っときゃいいじゃねーか。」  やっぱり、この人には勝てねーな……。  翼さんには何もかも見透かされてる気がして、そーいうとこもすげーなって思ってた。  けど実際は、メンバーのこと良く見てて理解してるからなんだ。 「翼さんはもうっ、仕事戻った方がいいっすよ!」  翼さんの背中をグイグイ押して止めてあるバイクのとこまで進む。  そんなことしても愉快に笑ってるから、俺が照れてるってこと絶対バレてる。  それがまた恥ずかしくて背中を押す手に力が入った。 「翼さん!……ありがとうございました!」
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