接して近づくと書いて接近と読む

11/27
前へ
/106ページ
次へ
 けど、ここじゃあ俺は不評なんかなー?  嫌われてる感じはないと思うんだけど、誰も声かけてこねぇ。  容姿には自信あるし男同士が普通なら、もう少しお誘いとかあってもいいと思ってたんだが。  今まで自分から行かなくても不自由してなかったせいか、誘うっていうのがどうも苦手だし誰選べばいいか分かんねー。  それに性処理に関して危機的状況だ。  だから……。 「せっかくのお誘いを断るってのも、ね。」  ニヤリと口を歪めてカードをズボンのポッケに突っ込んだ。  中身は最悪だが、見た目は申し分ねーしな。  あいにく俺は人を好きになったことなんかねーし、玲輝が心配するよーなことはないだろ。  向こうが飽きるまで遊ぶって言うんなら、こっちも楽しませてもらおうじゃねーの。  時間的に少し早いかもしれないけど、自室を出てエレベータに向かった。 「これ使うのか?」  エレベータの中で先ほどしまった金色のカードを取り出す。  これがねーと最上階まで行けねーって言ってたから、どっかに使うんだろう。  試しに一番上にある8の数字を押して見ても反応がなかった。  カードには部屋番号が記されているから奴の部屋は801号室だ。  エレベータ内のボタンの近くをよく観察していると8のボタンの更に上に細い溝を発見した。  カードを通したらピッと音がした。 「おお。つーかなんだよこのシステム。」  再び8を押したら今度はエレベータが動き出した。  なんであいつだけこんな特別みたいな扱いなんだよ?まさか会長だからとかじゃねーよな?  しばらくして扉が開くと目の前の光景に口を開いたまま固まった。  どう見ても俺たちの階と比べると高級感が溢れている。  しかもなんだこれ、爽やかな香りつきだぜ。
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加