ガチャガチャ

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 目を開けると、そこは真っ暗なところだった。  ここから出なきゃ。  そんな思いが俺を突き動かす。  進もうとして、何かが顔に当たる。  でも止まれない。俺は何度も体当たりを繰り返した。  何の小細工もしない。顔面から当たりに行く。  二度、三度とやるうちに壁は割れ、俺は更なる先へと進む。  その先に立ちふさがるのは砂だ。  大量の砂。それを俺は必死で掘るのだ。  目指すのは外。ここを抜ければ外に出られる。  そして、その先に待っているのは……。  必死で掘っていくとやがて、突如として砂が崩れてきた。  顔にかかる大量の砂。  同時に冷たい空気がさっと流れ込んでくる。  明らかに今までとは違う新鮮な空気に、俺の心は踊った。  やった。  ついに出られたんだ。  よぉし、それじゃ急いで向かうぞ。  波の音。塩の匂い。そっちへ向けて、俺は急いだ。  早く、早く辿り着かないと……。  後少し、というところで俺の体は唐突に持ち上げられた。  同時に上下から感じるとてつもない圧迫感。  何かが割れるような音がした。  必死でもがいてみるが、状況は何も変わらない。  そして、ゆっくりと俺の体はどこかへ送り込まれて行く。  狭すぎて、もうもがくことも出ない。  そして……。  「はーい、お久し振り。いや、そうでもないかな? やっぱりすぐ会えたね」  聞き覚えがある様な無いような声。 「この髪形、どうかなぁ?」  何か言おうとしたけれど、俺の口からは言葉が出てきてくれない。 「あははっ、海亀じゃねー。喋れないよねー。わっかんないよねー。後、やっぱり致死率高すぎだよねー。まあ、しょうがないんだけど」  海亀?  俺は、海亀だったのか? 「まあ、なかなか気づかないよね。気にしなさんな。その生き方も今日で終わり。ほんとはさ、死ぬ前日に来たいんだけどね。生き物は。特に生まれたてはね。出た、はい死んだ、みたいな世界だから。前日とか物理的に無かったりするしね」  不意に持ち上げられ、目の前に現れた巨大な顔。  大きな口に恐怖を覚え、俺はバタバタともがく。  だが、やっぱり何も状況は変わらなかった。 「あはは。分かんないよねー。まあ、説明してもしょうがないしね」  何を言ってるんだ。放せ放せ。 「とりあえず、ガチャガチャやっちゃおうか」  唐突にひょいと手放された。  目の前には、大きい何かがある。 「生き方変わるよ?」  何を言っているのかは分からない。  だけど、ここから逃げられない事だけは、よくわかった。
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