【ショート・ショート】ワタシノート

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私は導かれるように、抱えたノートを篠田さんに差し出した。 「わっ、すげぇ可愛い! ってか、島原さんメチャクチャ絵が上手いじゃん! もしかして、島原さんってさー! 漫画家とか、目指してるの?」 篠田さんは興奮で目をキラキラと輝かせながら、細い指で私のノートを次々とめくっていく。 「いや、そんなのは考えた事ない……。 ただ、自分が思った事をそのままノートに描いてるだけで……」 「えー、こんな上手いのならプロになれるって! 島原さん、今からでもそういうの目指しなよ!」 「えっ……、そんなの無理だよ。 私、ただ自分の好きな事を描いてるだけだし……」 「出来るって、出来るって!」 島原さんはスマートフォンを取り出すと、ノートに描いてある私のイラストを次々と撮影していった。 「ちょっと、篠田さん……」 「こんな才能をさ、眠らせたままにしとくのはもったいないって! ちょっと、TikTokに上げてみた! 島原さん、何かSNSとかやってないの?」 重度のコミュニケーション下手の私は、SNSのアカウントはあるものの、基本「見る専門」であり、これまで自ら情報を発信した事は一度も無かった。 「いや、島原さん! せっかく絵とか描いてるんだったら、それをSNSとかに上げなきゃもったいないって! 島原さんくらい、レベチのイラスト描ける腕があるんだったらさぁ! 何かストーリー性のあるイラスト描いたら絶対バズるから、やらなきゃ損だって!」 その後、篠田さんは私のイラストに対する賛辞を終始述べながら、隣のクラスへと帰っていった。 そして、「学年で一軍」の篠田さんに認められた、というのもあってか、クラスメイトの私を見る視線は、この出来事をキッカケとして見違えるように変わった。
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