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そして、骨までも冷やす、冬の寒さが本格的に到来した12月の事だ。
お昼休みになると、私はいつものように無言の状態でcampusノートに自らの妄想で生み出したキャラクターを描いていった。
男子達は、秋口に私が引き起こした授業のボイコットの一件があるからか、私の様を肩をすくめて見つめるのみで、女子達も恋愛や友人と無縁な私に対し、気味が悪そうな視線を向けるのみであった。
その時、一つの人影が私の目の前にあるノートに映り込んだ。
秋口にノートを奪われ、心ない落書きをされた経験がある私は顔を上げると、ガバリとノートを抱え、身体全体でノートを守った。
「えー、そんな隠されちゃったら、絵が見れないじゃん」
私の傍らに立っていた女子生徒は、アヒルのように唇を尖らせる事で不満を露とさせた。
「篠田……さん?」
隣のクラスに所属している、目の前のギャルの名前を、私は驚きをもって口にする。
彼女の事は、友達が一人もいない私でも知っていた。
持って生まれたルックス、愛嬌溢れる性格。
そして、自らの可愛さを引き立たせる制服を着こなすセンスなど、篠田さんの立ち位置はクラスのみならず「学年の一軍」と言っても差し支えない立ち位置であった。
「島原さんが凄い可愛いイラストを描いてる、って聞いてさぁ、ちょっと見に来てみたんだよねー」
篠田さんは白い歯を見せて笑うと、私に向かって手を差し出す。
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