序章

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序章

国風文化の風が吹き荒れ貴族たちが我が世の春を謳歌する平安の世。この世においてこれを嘲笑う男がいた。 この男の名は西京院万象…… 京の都にてヤミ陰陽師をしている最強の陰陽師である。 元々は遣唐使であったのだが、菅原道真公の進言から遣唐使が廃止された事により、遥か遠くの唐の国は長安の都にて風来坊となってしまった。これをよしとした万象は世界を旅して回る事にした。 旅を終え、旅先の森羅万象(ありとあらゆる)術を修めた万象は、日本は京の都に舞い降り、ヤミ陰陽師として日々、莫迦梵梵(バカボンボン)の貴族や京の都に災いを成す悪鬼悪霊相手にその力を振るうのであった。  さて、話し変わって、万象が京の都へと戻ったばかりの時のこと…… この日本の最高権力者であらせられる、時の御華門が重い熱病にかかられたのであった。 水に濡れ冷えた手拭(タオル)を額に乗せれば、瞬く間に乾いた唐菓子のようになり…… 清められた川の水にて体を冷やすために身を浸せば、水が瞬く間に熱い湯へと変わってしまう。 日本中から薬師(医者)を集め、懸命の治療が行われたのだが、熱病の原因すらも不明(わからず)終い。もしやこれは呪いの類ではないか、そう考えた内裏は神仏に縋り付き尋ね問うたのだった。そのために清涼殿で儀式が行われた。 陰陽寮より陰陽師を招き、清涼殿に祭壇を構えて神仏に御華門の熱病の原因を訪ねた。 祈祷の炎で清涼殿の中が陽炎で揺らめく、祭壇に置かれた真榊も祈祷の炎より起こる熱風で揺らめく、すると祭壇の中央に置かれた満月のように真円を描く鏡の中にありえない者が映し出された。 鏡に映りしは十二単を纏いし金毛九尾の狐である。 それを見た陰陽師は腰を抜かし、恐れ慄いた。
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