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園部はゆっくり起き上がると、布団を体に巻いて立ち上がる。布団を取られ、達也は裸のままベッドに取り残される。
「俺の服ってある?」
床に落ちている服を拾い上げながら、園部は恥ずかしそうに俺を見ないようにしている。そのかわいい姿に、珍しくときめいた。
こいつにこんな一面があったことにびっくりした。まぁまさか友達とこんなことになるなんて普通は思わないよな。そこで達也はハッとする。
「お前、彼氏とかいるのか? いたらこの展開はヤバくないか?」
「……三十手前の女になんてこと言うのよ……。本当にたっちゃんは昔からデリカシーがないんだから」
「ということは独身、彼氏ナシか。安心しろ、俺もだから」
「どういう安心よ、意味わかんない」
だが達也は園部の顔が歪むのを見逃さなかった。園部は背中を向けると、クローゼットを開ける。
「……何かあったのか?」
布団をかぶりながら器用に着替えを済ませていく。それを見ながら達也も服を着ていく。
「……別に」
布団をベッドに戻しにきた園部の顔が、どこか悲しみを帯びていた。
その表情を見た達也は、衝動的に彼女の手を引きベッドに座らせたが、園部は顔を背け、再び立ちあがろうとする。
「……たっちゃん、朝ごはん食べてくでしょ? 何か作るよ。まぁたっちゃんの方が上手いかもしれないけど」
「園部はお菓子担当だったもんな。俺たちなかなかいいコンビネーションだった気がするぞ」
「うん、確かにね」
「よし、じゃあ俺が聞いてやるから話してみろ」
「……今ってそういう流れだった?」
「あぁ、そういう流れだった。俺はお前の良き理解者だから」
「あはは! まぁそれは言えてるかも!」
園部は笑いながらベッドに倒れ込むと、ため息をついてから目を閉じた。
「半年前の飲み会にたっちゃんは来なかったんだよねぇ」
「あぁ、出張と重なってたからな」
「実はあの日、私もドタキャンしたんだ」
「ふーん。まぁそんなのよくあることだろ」
目を開け天井を見上げると、グッと握りしめた拳で両目を隠す。
「……付き合ってた人がね、職場の後輩を妊娠させちゃったんだって」
「うわ……マジか……」
「私は年齢的に、これが最後の恋で、きっと結婚に向かうんだ〜って勝手に思ってたの。それがまさかの展開。私は彼が一番好きだったのに、あの人はそうじゃなかった。その事実を知らされたのがあの飲み会の日だったわけ」
「なるほど。なら飲み会で愚痴れば良かったのに」
「嫌よ。アラサー女がフラれて愚痴るなんて……」
涙をこらえてるんだろうな……達也が園部の目元に手を乗せると、彼女が握りしめていた拳の力が緩み、達也の手をそっと握った。
「まだ引きずってんの?」
「……どうかな……。あんな浮気男、結婚したって浮気しそうじゃない? そう考えると結婚しなくていい良かった〜と思う反面、結婚自体はしたかったな〜みたいな。バツが付いてもいいから、一回くらいはしておきたかった」
「なんだよ、それ! まだまだこれからだろ。お前ならもっといい男が見つかるよ」
「……なんか恋愛に対するモチベーションが下がったの。上がる気がしない。もう恋愛は最後だと思ってたしね」
未だにこの状態ということは、半年間かなり凹んでたんだろうな。
「よし、じゃあ今日は俺が朝食を作ってやる。ゆっくり待ってていいぞ」
「えっ……いいの?」
達也は園部の頭をポンと叩くとキッチンに向かった。
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