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意識が戻ってきて目を開けたが、暗いままだった。視界の左に小さな赤いLEDランプが見える。
体をよじらせると、どうやらベルトで固定されているのが分かる。わずかな明かりで少し目が慣れると、そこは狭い空間だった。まるで棺のような――いや。
思い出した。
「AI、モニターをオン」
かすれた声に自分でも驚くが、AIはそれでも認識した。一瞬の間ののち、前面がパッと明るく――は、ならなかった。そこは星空だったからだ。いや、空ではない。星の海だ。
ここは地球から遠く、本当に遠く離れた真空の中なのだ。
「時間切れ、か……」
俺は起きたくて起きたわけでも、起こされたわけでもない。単に脱出カプセルの、五年間を保障する仮死維持機能が限界を迎えたのだ。つまり救助が間に合わなかったと言うわけだ。
空腹も感じないし、思考もぼんやりしている。どうせなら仮死からから本当の死に追いやれば良いものを。最後に起きて一縷の望みにかけろと言うのか? あるいは神に祈る時間を与えられたのか。
「少佐……アイリス」
俺をこの場所へ送り出した女性の名を呼ぶ。実験は成功したのだろうか。いや、成功のはずだ。
俺はニ七億キロメートル――18AUを飛び越えたのだから。
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