フミカが選んだ男

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 思い出は尽きませんでした。こうやって縁側で恋人の好きだった歌を歌って過ごしてもう幾年。初恋に身を焦がした少女はもう23の大人の女になっていました。フミカの歌は、雨を伴奏に一日中続くのです。綺麗な高音を響かせて歌う声は少女の時と変わりません。    そんな彼女に見惚れている影があるなんてフミカは全く気づいていなかったのです。  あやかしがフミカの独り語りで知ったことは、フミカの両親はもういないこと、そして壮介という名前の恋人がいたらしいことです。どうして、その壮介がもう訪ねてこないのかはわかりませんでした。独り言ちているフミカが、壮介さんと唇から零す音に、胸を甘く締めつけられるような感傷を感じました。そして、涙を零すと濡れるフミカの睫毛はとても長いな、とぼんやりと思いました。    あやかしは、もっとフミカの話が聞いてみたいなと思いながら、この家の庭で、フミカから見えないのをいいことに、・・・、何も考えないで、頭を空っぽにしてゴロ寝をしています。軽快に2拍子を刻む雨音を聞いて鼻歌気分でいると、いきなりパッとひらめいたことがありました。
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