フミカが選んだ男

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――――そうだ! 雨の日に人型をつくってフミカと話をしてみよう!。  我ながら名案だ! と急な思いつきにあやかしはわくわくしました。 どんな人型にしようかな?と、あれこれ考えてその夜は、珍しく眠れませんでした。  その日も、フミカは縁側で歌っていました。雨の日に、フミカが決して見ようとしない外の世界は、静かで冷たい秋霖に濡れ、心躍る夏のあいだ太陽の光に煌めいていた空気は色を失ってしまいました。淋しさが誘われます。  フミカは、寂寥感を払おうと、北原白秋の歌を口ずさんでみました。      ♪遊びに行きたし、傘はなし…    かえって淋しくなってしまって、苦笑いを溢していたその時、玄関で声が聞こえました。  「もし、どなたかおいでですか?」  「はーい、只今!」    フミカが縁側から玄関に回ると、そこには背の高い25~6の見目の良い男性が立っていました。大きな目は少し吊り気味で、口元には少年の面影が残っています。  白い長着に袴を着け、なにやら道具箱を持っています。傘を忘れたのか、道具箱が大きすぎて持てなかったのか、白い長着は肩まで濡れていました。
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