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「はい? なにか御用ですか?」
「私、出張髪結いをしております高山雄一といいます。お嬢さん、僕が髪を結いますが、いかがでしょうか? 貴女のお好きな髪に結えますよ」
フミカは心臓が跳ねるのを感じました。壮介と知り合ったのはまさに同じ状況でした。そして、壮介が生きていたならきっとこんな大人の男性になっていたに違いないと思ったのです。フミカの胸は熱くなりました。
「お嬢さんなら、耳隠しが似合いそうですよ」
「あら、耳隠しはもうさほど流行らなくてよ。おできになるの?」
「ええ、勿論、夜会巻がよろしければそちらでも」
「いえ、耳隠しをしてくださる?」
「はい、承知しました」
縁側に回るように言うと、フミカは高鳴る胸を沈めようと大きく深呼吸をしました。
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