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フミカの両親は、初恋同士。初恋の人と結ばれたけど、一緒に暮らせなかったから、それを娘に託しました。なのに、花嫁姿を見ないうちに彼女を残して流行り病で逝ってしまいました。父も母もまだ若かったのに……。
両親に愛された思い出に包まれながら、フミカは独りで生きていたのです。フミカは両親が望んだように美しく心優しい娘に成長しました。
本家の兄達が見合い話を持ってきますが、フミカは首を縦にはふりません。初恋の人がいたからです。
初恋が訪れたのは、16の時でした。
フミカの愛した人は、フミカが歌を歌うのを好んで聞きました。縁側でフミカが歌を歌うと、フミカの膝に頭を預け、優しい微笑みを浮かべて目を瞑ってその美声に耳を傾けるのです。
フミカは、白地に紺と黄色の縦縞が入った着物がよく似合っていました。帯は橙色に白い幾何学模様が入っている恋人の壮介が贈ったものです。
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