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ぐだぐだ姉。
「ちょっとまったぁああ!!」
何を言い出すんだこの人は!!
「なによぉ、夜なんだから大きな声出さないでよ」
「お姉ちゃんがとんでもないこと言いだすからでしょ!」
「トンデモナクないもん。たくさん考えたもん」
「コドモか!?」
「だってさぁ……この不景気だっていうのに色々仕事任されてさ、新しことにも挑戦しないかって、言ってくれているんだよ?」
「それはありがたいけれど、だからと言ってどうして、結婚やめる、になるの。結婚しても仕事続けられるでしょう? 陽菜人さんの気持ちはどうなるの!?」
「理解してくれると思うなぁ」
「理解の範疇こえるから!」
頭痛くなってくる。
確かに、ほわほわ和み系の陽菜人さんは、「それがエリカちゃんの選んだ道なら」と許してくれそうなのが目に見える。控えめながら相手のことをとてもよく見てくれて、心から応援してくれる。
けどね。
だからと言ってね。
明日なんだよ結婚式。
今日は、結婚前夜なんだよ。
式開始まで、十二時間を切っているんだよ!
「ダメ、無理。今からキャンセルなんてできるわけないじゃん」
ここは妹として、私、佳央が説得します、陽菜人さん。
最近すっかり頭が寂しくなったお父さんや半年ダイエットに耐えたお母さん。知的でお優しいお義父さんと料理がとんでもなく上手いお義母さんも、絶対に悲しませたりいたしません。
「お姉ちゃん、ちょっとここ、座って」
「いやぁん、怖いよ佳央」
「怖いに決まってる。ここまで来るのにどれだけ大変だったか、分かってるの? お姉ちゃんが、この人サイコーもぅ彼しかいない! って言った日から式に向けていろいろやってきたじゃない」
「ドレスも指輪も佳央ちゃんに選んでもらったよねぇ」
「もらったよねぇ、じゃないでしょ! ファッションに関してはお姉ちゃんの方がプロなのに、ぐだぐだだったからでしょう!」
あぁぁ……思い出すだけでも顔から火が出る。
式場選びから何から、「佳央と一緒じゃないと決められない」と言って、陽菜人さんと三人で見て回るとかもぅ、あり得ないでしょう。そういうの、夫婦になる二人が力を合わせてやるものじゃないの?
陽菜人さんは笑って許してくれていたけど、内心、「この人で大丈夫かなぁ……」なんて思われていやしないかと、私は冷や冷やしていたんだよ。
「式はこの日がいいって言ったの、お姉ちゃんなんだからね。陽菜人さんがお姉ちゃんに酷いことした、って言うなら話は変わるけど、そうじゃないんでしょう?」
「ヒナくんは優しくて素敵なひとよ」
「だったらどうしていきなり結婚やめるなんて言うの! この日の為に日時を調整してくれた列席者に、どう説明するつもり!?」
「んん……わたくし英里佳は仕事のため、世界を飛び回ることにしましたので結婚いたしません。かな?」
マジで言ってるのか!?
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