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こんな姉は許せません!
どうしてこんなことになったんだ。
英里佳は、かなりそうとういい加減なところがあるけれど、バレエの発表会も高校入試も就職も、当日にはビシッと決めてクリアしてきた。今も支店のひとつを任されてるぐらいだもの、口調と態度はこんな感じでも、やる時はやる立派な社会人になれたと思っていた。
いざとなったら臆病になって、責任感だけで乗り切ってきた私とは違う。
思ったことをどんどん口にして行動に移せるお姉ちゃんは、私の憧れでもあったというのに。
「ひとつ確認する」
「うん」
「陽菜人さんにはもう、結婚やめる、って言ったの?」
「そりゃあね、新郎には最初に伝えなきゃ」
「このバカ姉っ!」
カードキーを手にして部屋を出る。ついて来る英里佳。
陽菜人さんは最上階のレストランに置いてきたと言っていた。エレベーターを待つのももどかしくて、そのまま最上階まで吹き抜けになったエスカレーターに向かう。
「ちょっと、速いよぉ」
「ダメだ、らちがあかない。まずは陽菜人さんに謝って、明日の式は滞りなく行いますと伝えよう。婚姻届けはまだなのだら、お互い納得いくまで話し合って……」
「佳央ってば!」
「うっさい! あまりにもバカなこと言うから、めっちゃ怒ってるんだから!」
「だって本当の気持ちだもん」
「だとしても、時間あったでしょう!? どうして今なの? こんな直前になってなの!?」
私の声が吹き抜けのホテルに響き渡る。
振り返るお客さんたち。うるさくてごめんなさい。でも、あんなにいい人を悲しませたり困らせたりする英里佳が許せない。
「なかなか素直にならないから」
「誰が!?」
口を尖らせる。そんな顔すら綺麗なのに、今はとっても憎らしい。
「陽菜人さんに不満なんて無いんでしょう!?」
「無い無い。いい人よね。ヒナくんの友達に話を聞いても、悪い話なんて聞かない。天然記念物クラスの人の良さ。あえて欠点を言うなら押しが弱いところかな? 相手の気持ちを考えすぎて強引になれないところ」
「だったら、お姉ちゃんが引っ張ってあげればいいじゃない。押しの強い人より包容力のある人の方がいいって、言ってたよね!」
「そうなのよねぇ。我の強い人とだと私、ガチンコで喧嘩しちゃうから」
へらっと笑って見せる。
そこ笑う所じゃないでしょう!!
「だったら、好きな人のこと悲しませるようなことしないでよ! それとももう、好きじゃなくなったてこと!?」
「んー……好き、だけど、夫としては違うかな」
もぅ……泣きそう。
「だったら、私が結婚する!!」
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