炎々と燃え盛る為には何に火を灯すべきか

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 “今”が(のち)の世で“古代”と一括(ひとくくり)で呼ばれる時代。  国と国が(いくさ)に明け暮れて、侵略しては略奪し、村や国が滅んでいくのは珍しくもない時代だ。  その時代に強国(きょうこく)の一国である都市に、巨大な闘技場(コロッセオ)が建造されていた。  真夜中であるため観客席(かんきゃくせき)には誰一人(だれひとり)おらず、静寂(せいじゃく)に包まれている。  この闘技場には地下牢屋(ちかろうや)があり、真っ暗な(ろう)の中に一人の男剣闘士(けんとうし)(くさり)(つな)がられていた。  明日(もよお)される“死合(しあ)い”に(そな)えて、壁に空けられた空気口(くうきぐち)の穴から(わず)かに見える満月を見つめていた。  気持ちを落ち着かせる為に――  男は、ある国で傭兵(ようへい)として(やと)われていたが、戦に負けて捕らわれてしまい奴隷(どれい)として、剣闘士(見世物)へと(ふく)すことになった。  悲劇(ひげき)であるが、珍しくない光景(こうけい)だ。  どの国でも奴隷制度があり、人身売買(じんしんばいばい)捕虜(ほりょ)奴隷(どれい)にして家畜(かちく)のように扱っていた。  いつか己の身に降りかかもしれないと心の片隅(かたすみ)で思っていたが、奴隷身分に落とされた状況に、男は悲観(ひかん)してはいなかった。  この闘技場で()まされる死合(しあ)い10戦に全て勝利すれば、褒賞(ほうしょう)として奴隷から解放され、自由が与えられるからだ。  もしかしたら、ついでに剣の腕前を買われて、また傭兵や用心棒(ようじんぼう)として(やと)われるかもしれない。  名前を売るにはうってつけの場であり、結果を残してきた。
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