炎々と燃え盛る為には何に火を灯すべきか

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 一戦目‥雇われていた国の兵士との殺し合い。  ついこの間まで同じ釜の飯を食って、肩を並べて戦う仲間ではあったが、奴隷となり闘技場で剣を向け合えば、義理(ぎり)恩情(おんじょう)など微塵(みじん)もなくなる。  ここで生き残ることが正義なのだから。  三戦目‥南方(なんぽう)の大陸に生息(せいそく)しているという(するどい)く伸びた牙を持った大型の肉食獣(にくしょくじゅう)。  所詮(しょせん)は獣。素手なら食い殺されたかもしれないが、武器を手にした人間の方が若干有利だった。  七戦目‥西国一(さいごくいち)剛勇(ごうゆう)と呼ばれた強者(つわもの)との一騎打ち。  片腕を失っていたとはいえ剣術の(するど)さは、これまでの人生の中でやりあってきた相手で一番手強(てごわ)かった。  もし片腕が健在で、あちらの武器(剣)が最後まで折れずにいたのなら、ここには居なかっただろう。  間一髪(かんいっぱつ)で勝てたのは実力よりも運が良かったからかもしれない。  九戦目‥十人の若者達との多対一(たたいいち)の戦い。  奴隷になりたての(とし)は十代程度の者たちだっただろう。  見せしめの為に組まれた死合(しあ)いだったかもしれないが、主催者側(しゅさいしゃがわ)魂胆(こんたん)思惑(おもわく)など関係無い。  若者たちは取るに足らない技量しかなく、一人を斬り殺したあとは及び腰になっては、一方的な虐殺(ぎゃくさつ)‥‥弱い者イジメのようだった。  様々な残酷(ざんこく)惨憺(さんたん)な戦いを乗り越えてきた。  そして夜が明けて、太陽が一番高い位置に座した時に、十戦目が始まる。  最後の死合いは九戦目のように後味が悪くても楽な戦いであって欲しいが、どんな戦いであれ、勝って生き残れれば良い。  勝って生き残れば、再び自由を手にするのだから。 「自由になれたら、生まれ故郷に戻るのも良いかもな‥‥」  男はそう(つぶや)き、まぶたを閉じた。
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