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間もなく空が白け始めます。
私を通して朝が迫る様を見る彼女は一筋の雫を流しました。
「同じ道を歩まないようにします。それが、望みだと知っているから……だから、約束してください」
声を震わせ、伝えるために思いを込めようとしているのが見て分かりました。
何故か、その姿から目を逸らすことが出来ませんでした。
「必ず、私を迎えに来るのはあなただと……あなたでなければならないと、約束、してください」
「それは……」
「その時が、きっと私たちの最後になるから!」
死期を告げることも、死期を迎えた者を選ぶことも出来ないことを告げようとする私などお構い無しに、彼女は幾筋もの雫を流しました。
声に怒りを含ませているのに、その顔には悲しみを湛えていました。
「あなたを追うことはないから、私の最期は……迎えに、来て」
私は何者だったのでしょうか。
私は彼女の何かだったのでしょうか。
「───分かりました」
真っ直ぐに睨み付けてくる彼女に触れたいと思いました。
その頬を流れる雫を拭って止めてあげたいと思いました。
向かい合う彼女は柔らかな笑みを見せてくれました。
持ち合わせていない心臓の波打つ音が聞こえました。
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