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朝、月曜日。天気は、晴れだ。
私は、お兄ちゃんの遺骨がある仏壇に花を添え、手を合わせた。
(行ってきます。お兄ちゃん。)
行ってきますとは、言った(思った)ものの本当は、学校なんて
行きたくない。なんせ今日は、入学式だ。
私の価値観的に、入学式=新しい出会い。だから、もっと行きたくない。
新しい出会いなんて必要ない。
新しく友達なんて、知り合いなんて作ったら、めんどくさいじゃんか。
そして、その出会いが、私を苦しめることくらいわかってる。
だから、嫌なんだ。10年一緒にいても、ちょっとした事で
その10年間築いてきた友情は、一瞬にして崩壊していく。
私は知っている。その事がトラウマで友達を作りたくなんかないっていう
臆病者になったことを
私は知っている。友達を作るごとに自分の首を絞めていることを
なんて、そんなことを思っていたら、つい、ぼーっとしていた。
その瞬間だ。私の真ん前、目と鼻の先っちょに何かが猛スピードでかすった。
「あっ……!」と変な声を出した。
「おおっと、わりぃ!でも!ぶつかってないからセーフ、セーフ!」
セーフではない、この場合は、ぶつかりそうになった時点でアウトだ。
そして、反省する気がないなら、はなから話しかけないで欲しい。
そう思ったが、どこか聞き覚えのある声質だった。
透き通ってもおらず、低すぎもせず。そんな声だった。
「あ!?ユキじゃんか!」
背筋が凍った。
(しまった、優太だ。なんでよりによって、今なんだよ。)
「ねね、華の中学校生活だぞ✨もっと喜べよ✨」
「はぁ?どこを喜ぶんだよ。めんどくさい。」
私は、素っ気なく、まるで「貴方には興味ありませんよー」と言っているように塩気がありすぎてナメクジが完全に干からびるのと同じくらい
冷たく返した。
彼は、昔からあんな感じ……っていう訳でもない。
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